超おすすめ映画

映画『サブスタンス』徹底解説


肉体の裏側に潜む“本質”を暴く衝撃の一作

【ネタバレあり】







こんにちは。


今回は、2024年公開の話題作『サブスタンス』(原題:The SubstancePrime Video



について、ネタバレありでご紹介しつつ、個人的な考察を交えて深堀りしていきます。




あらすじ(ネタバレあり)




物語の主人公は、かつてハリウッドで一世を風靡した女優・エリザベス

(デミ・ムーア)

年齢を重ねるにつれて役を失い、世間からは忘れ去られつつあった。






惨めに肩をおとすエリザベス

そんな彼女を見た医者の青年は…



“サブスタンス”に繋がるある物をポケットにしのばせる…それはあるキットを手に入れる為の手がかり


若さへの渇望に抗えなかったエリザベスはついに“サブスタンス”を手に入れてしまう




キットの中身は、活性化剤、安定剤、スイッチ、特別な食料だ。


そして、

一度だけ活性化し、毎日安定させ、例外なく7日ごとに体を交換し、「常に自分が1つである事」を覚えておかなくてはならない。



エリザベスは、その緑の液体を身体に注射し…





理想の若々しい自分自身スーを“外に”生み出すことができた。

(マーガレット・クアリー)









美しく完璧な肉体を持ち、若さに満ち溢れた彼女は、次第にエリザベスの人生を乗っ取っていく。














スーは自身の存在を正当化し、やがてエリザベスと対立する。



"サブスタンス"によって生み出された体は、自分自身であるはずである事を忘れ…




クライマックスでは、怒りにまかせたスーがエリザベスを抹殺してしまうのだが


どうしようもない事態に、もがき苦しみ、体も心も壊れていく様子が狂気じみていて、とにかく心が痛かった…






最後は肉片と化した笑顔のエリザベス…彼女は本当に幸せだったのか…?!





【私の感想】


人間の存在意義


老い、美、そして「自分とは何者か?!」


哲学的問いが隠された新しいホラーだと感じさせられました。




前半、スーのエロく(すみません)若々しい肉体に魅了させられた分、あとからの反動がとにかく大きかった。 (;>_<;)


見終わってからは、終盤スーの泣きそうな笑顔が忘れられなくてYouTubeも何度も検索してしまった程です。




中毒性のある、超オススメの映画です。




この映画が問いかけるもの――考察


1. “若さ”は商品になるのか?






『サブスタンス』は、現代社会が抱える“加齢への恐怖”や“見た目至上主義”を強烈に皮肉っている。


エリザベスはキャリアを守るために若さを渇望し、最終的に“若い自分”に人生を奪われるという逆説的な結末を迎える。


これは、実際のエンタメ業界にも通じる深いメッセージとして刺さる。




2. 自己とは何か?






スーは単なる複製ではなく、自分なりの欲望と意志を持って行動する存在。



つまり“自分の中の理想像”が、ある種の人格を得て暴走していく様子は、



人間が抱える「理想」と「現実」の乖離が生む苦悩そのもの。



観客は、どちらが本当の“自分”なのかという問いを突きつけられる。





3. フェミニズムと身体の再定義


この映画は、肉体の変化に対する社会の偏見や女性の加齢に対するプレッシャー、メディアによる女性像の固定化を強烈に批判している。




見た目が美しければ価値がある

という価値観に真っ向からNOを突きつけており、フェミニズム的視点からも極めて示唆的な一作だといえる。




映画「サブスタンス」 The Substance Prime Video




終わりに…



スーは、かつての完璧な肉体や“美しさ”をすでに失っている。でも、あの最後の瞬間のエリザベスの表情はどこか満ち足りていて、晴れやかにすら見える。

それが何を意味しているのか、私なりに読み解いてみます。



理想の終焉と“本当の自由”






スーという存在は、エリザベスの欲望と恐れ、理想像の具現化でした。



つまり、「美しくなければ価値がない」という外的な価値基準を体現する存在です。


でも、最後にバケモノのような姿になってなお、人前に立ち拍手を浴びるスーは、その価値観からの完全な脱却を象徴しているのかもしれません。



たとえ醜くなっても、



自分という存在を否定しない。


その意思こそがスーを「怪物ではなく、自由な個」として舞台に立たせたとも考えられます。


逃げるのではなく、あえてそこに立ち続けることで「私はここにいる」と世界に対して叫んでいたのかもしれません。





もうひとつの読み方〜勝者の笑み〜



一方で、もっと冷酷な読み方もできます。

スーは「エリザベスを完全に置き去りにして勝った」のです。


つまり、自分の存在意義は外見や若さに依存していないと悟ったうえで、その支配からも自由になった。


勝者の笑みとも取れるわけです。


スーは、もしかしたら「逃げる」という感情すら超えてしまったのかもしれません。


怖くて、壊れてしまいそうで、それでも舞台に立つ。その選択に込められた“何か”が、観る人の心をえぐります。



まさに「心に爪痕を残す映画」



あなたなら、サブスタンスを使いますか?








『サブスタンス』(原題:The Substance)は、フランスの鬼才コラリー・ファルジャが監督・脚本・編集を手がけた、2024年製作のSFホラー・スリラーです。


彼女は過去に『REVENGE リベンジ』などで注目を集めた監督で、本作ではその鋭い視点と過激な演出がさらに進化しています。




主なキャスト



  • デミ・ムーア:エリザベス・スパークル役 かつてのスター女優で、若さと美を取り戻すために“サブスタンス”に手を出す主人公。ムーアはこの役でゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされました。



  • マーガレット・クアリー:スー役 サブスタンスによって生み出された“若いエリザベス”。美しさと野心を兼ね備えた存在で、物語の中核を担います。



  • デニス・クエイド:ハーヴェイ役 エリザベスを番組から降板させるテレビプロデューサー。彼の存在が物語の転機を生み出します。




この映画は第77回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞し、アカデミー賞ではメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞するなど、批評家からも高く評価されました